過去に鉄骨と木造系のハウスメーカー双方に約17年間在籍した経験を持つプロ建築士が解説します。
この記事は私のYouTubeチャンネルで発信した内容を記載したものです。
私は現在、東京・千葉・埼玉・神奈川限定で住宅購入カウンセリングほか、あらゆる住宅相談を行っています。
その中で相談者様から
「ハウスメーカーのイメージをザックリ教えてほしい。」
と、よく言われます。
ということで今回は『ハウスメーカーとは?』を主題に
❶ 価格・坪単価
❷ 品質(標準仕様など)
❸ 保証・アフターサービス
❹ 値引き
❺ 設計力
❻ 選び方・比較ポイント
などをザックリと解説していきます。
大手ハウスメーカーとは?
上記は住宅産業新聞社より抜粋した
2020年度の大手住宅企業の総販売戸数・戸建販売戸数
の表となります。
ちなみに注文住宅・建売住宅など一戸建てについては表の右側
戸建販売戸数
に着目してください。
(中央の総販売戸数は分譲マンションの各戸数も含むため)
コロナの影響でヤマダホームズ以外は全て前年比減と大変厳しい状況になっています。
● パナソニックホームズ
● ミサワホーム、
● トヨタホーム
上記の3社が
プライムライフテクノロジーズ
というホールディングス会社として2020年1月に組織上合併したことも大きなニュースとなりました。
実質的に戸建販売戸数一位と予想される一条工務店は正式な総戸数を発表していないため備考としています。
ザックリ言うと、大手ハウスメーカーは
断熱等の性能数値よりも信頼と実績推し
というのがわかりやすいイメージかと思います。
上記の表を見てわかるとおり、
その半数は鉄骨系の住宅を建てているハウスメーカーです。
そもそもの話として『鉄は木の350倍以上の熱伝導率』ですからヒートブリッジ等による熱損失が大きいため断熱性においては厳しいです。
さらに東京23区のような狭小地の場合は木造と違って設計の自由度が低いためギリギリの間取りを設計することは難しくなります。
詳細は私のYouTube動画でいろいろ発信しているので割愛しますが、最近SNSの普及により着目されている
スーパー工務店含むハイグレード工務店
(高断熱高気密など超高性能な住宅を手掛ける工務店)
に押され気味な印象を受けます。
そのため、あくまでもザックリしたイメージでいうと、
● 高断熱高気密や自然素材、無垢の建具、造作家具などを重視
➡ ハイグレード工務店
● 信頼と実績、保証、アフターサービスなどを重視
➡ 大手ハウスメーカー
という傾向にわかれていると言えます。
ハウスメーカーの価格・坪単価ランキング
上記は私が過去に住宅相談ほか様々なデータから概算で集計しランキングにしたものです。
(※ヤマダホームズ・一条工務店等サンプル数少ないため参考値)
大手ハウスメーカーの価格は一般の工務店と比較して約3割程度高額になっています。
その大きな理由は
広告宣伝費や販売促進費などのさまざまな経費
が莫大にかかっているからです。
大手ハウスメーカーの価格は基本的には
建築エリアや時期、そのほか様々な要素で変動する
という傾向があるため注意が必要です。
たとえば、ハウスメーカーA社で商談をしている東京のお客様が、2年前に大阪でA社で建築した学生時代の親友にいろいろ相談したとします。
しかし、いくら当時の見積り書や打ち合わせ記録など分析して親身になってアドバイスをしてくれたとしても全く参考にならないのが実情です。
一方で工務店は基本的に値引きをせず地域密着が基本なので、そういった価格に不自然な変動があったりする可能性は低いです。
なので、大手ハウスメーカーの価格や坪単価はあくまでも参考程度にして個々に交渉・検討する必要があります。
大手ハウスメーカーの品質(グレードや標準仕様など)
根本的な話として、大手ハウスメーカーは年間数千棟以上の『数』を取りにいかなければなりません。
積水ハウス、ヘーベルハウス、一条工務店、大和ハウスなどの住宅メーカーによっては1万棟以上
そのため、あまり特出したマニアックな仕様や高額すぎる商品は使わない傾向があります。
大手ハウスメーカーの仕様・品質に関しては
中の上程度のグレードを標準として個々にオプション対応
というのが一般的です。
世の中はお金持ちばかりではありません。
大手ハウスメーカーで建てようとするお客様は全国平均でいえば高額所得者が多いですが限度があります。
さらに『松・竹・梅』のように住宅のグレードを分けてラインナップを幅広く用意することによって、
「何だよ!標準じゃあ出来ないのかよ!」
と言われても、
「いえっ!こちらの松シリーズのグレードなら標準で全て入ってます!」
といった感じで、
「大手ハウスメーカーって大したことないな!」
と言われることもなく、かといって予算の無いお客様には
「こちらのスタンダードシリーズなら予算の無いお客様にも対応できます!」
など…
数多くのお客様を出来るだけ取りこぼさないで受注棟数を確保
できるようにしています。
そして大手ハウスメーカーとしての威厳や体裁を保っています。
大手ハウスメーカーの保証・アフターサービス
近年、60年間の長期保証を掲げているハウスメーカーが増えています。
長きにわたって『我が家』を保証してもらえるのはお客様からすれば大変ありがたいことです。
確かに資本力が大きい故のことではありますが…
これにはカラクリがあります。
アフターサービス部門の担当者が、例えば10年、15年、30年…などの定期点検をします。
そこで指摘したリフォーム工事を有償で行った場合に限り保証延長で最長60年までという仕組みになっています。
一般的なケースとしては、
外壁・屋根・防水等のリフォーム工事だけで総額300万円
といった見積もりが提示されます。
大手ハウスメーカーは累計で数十万戸の過去に引渡したお客様を抱えています。
当然、そういったお客様は
自分が建てたハウスメーカーにリフォーム工事を依頼する
ケースが多いです。
そのためハウスメーカーはアフターサービス部門(リフォーム部門)や子会社をもっています。
積水ハウスでいえば、積水ハウスリフォームというアフターサービス兼リフォームの会社があります。
その社員数は全国で1500人も在籍しています。
もちろん旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)・セキスイハイム・住友林業・ミサワホームほか…
すべての大手ハウスメーカーはそういったアフター部門を会社として抱えています。
これは一生に一度の買い物である『家』を買ったお客様からすれば大変安心といえます。
ただしそういった子会社の見積もり金額は一般リフォーム会社の標準価格の1,5倍程度とかなり高額であるケースが多いです。
大手ハウスメーカーの値引き
大手ハウスメーカーの値引きについては上記にリンクした私のYouTube動画で詳細を解説しています。
なので、この章では要点をザックリと解説します。
「大手ハウスメーカーは値引き合戦!」
などという声をよく聞きますが、これは紛れもない事実です。
値引きは理不尽だしあってはならないと私は思います。
しかし数社競合してハウスメーカーを検討すれば、必ずこの『値引きします!』という現象に巻き込まれていきます。
なかには請負金額の15%以上…
たとえば4000万が3300万になった…というケースもあったりします。
なぜ、このようなことが起こるかというと、基本的にハウスメーカーの価格は
建築エリア、時期、規模、仕様、担当者ほか…
さまざまな要因で決定されるからです。
もちろん規定利益率が各ハウスメーカーで決まっています。
たとえば、請負金金額3000万であれば最終粗利率25%、ようするに750万円の利益を残さなければならない。
しかし実際は上記の赤文字で示した要因によって例えば20%まで、すなわち最終利益が600万円の利益でもよくなったりします。
個人事業主や中小企業であれば『売上よりも利益率を重視』するケースが多いです。
たとえば1000万の売り上げで利益が300万のほうが2000万の売り上げで利益が300万より良いわけです。
しかし一部上場企業の大手ハウスメーカーの場合、PL(損益計算表)のトップライン(総売上高)も株主や関係取引先に対して重要になってきたりします。
さらに年間完工棟数も自社の地位や体裁を保つためだったり、抱えている莫大な業者(職人)を守るためにも一定の数字を残さなければなりません。
そのため、よく言われる
『利益率度外視の大幅値引きで強引に契約を勝ち取る』
という悪しき必殺技が炸裂してしまうのです。
これは大手ハウスメーカーが悪いというよりも私個人としては『宿命』だと感じています。
一方で、そういったシガラミのない工務店は基本的に『値引き』という概念がありません。
詳細は上記の青リンクより私のYouTube動画をご覧ください。
大手ハウスメーカーの設計力
先ほど少し触れたとおり、大手ハウスメーカーは鉄骨造の割合が多いです。
さらに木造であっても『型式認定』という建築確認申請を簡略化できる認定住宅が多いため設計の自由度は在来木造と比較して低いといえます。
『鉄骨と木造の比較』に関しては上記の私のYouTube動画が参考になりますので御覧ください。
なので、この章では『設計力』についてザックリと要点を解説します。
鉄骨は木造と違って現場で切ったり貼ったりができません。
柱や梁といった構成部材は全て工場で生産されます。
なので現場の職人のスキルに左右されず品質のバラツキがないといったメリットもあります。
しかし東京23区などの狭小地では、建物の輪郭や高さが1センチ単位のシビアな設計が要求されます。
鉄骨住宅の柱や梁などの構成部材は基本寸法が決まっています。
例えば45・60・90センチなど…
この決まった寸法の部材を組み合わせて住宅を建築していくので、
『あと5センチ南に広げてください』
『天井高さを240センチから245センチにしてください』
と言われても対応できず、南に15センチ、天井高さも240センチの次は260センチでないと対応不可といった問題が発生します。
さらに鉄骨住宅の場合、クレーン車を筆頭に大型の重機が現地まで侵入して大々的に工事を行わなくてはなりません。大型重機の設置場所も確保しなければなりません。
しかし首都圏の狭小地の場合、そういった重機が入れなかったり、設置スペースが確保できないことも多いです。
そのため、やむおえず手運びで搬入して莫大な費用がかることもあります。
さらに大きな会社ではよく言われることですが…
社内ルールに縛られていて標準以外の設計が出来なかったり…
設計者の判断に委ねられるようなケースだと会社側にとって安全(自己保身側)になりがちです。
そういったことから設計力に関しては工務店と比較すると総合的に低いといえます。
大手ハウスメーカーの選び方や工務店との比較
ハウスメーカーや工務店などの選び方に正解はありません。
なぜなら個々のお客様によって条件が違うからです。
予算・建築地域・建物規模・防火指定の有無・家族構成・居住想定期間…
など…数えたらキリがありません。
住宅会社にアプローチする前に、事前にある程度予習をしてから具体的な行動に移すようにしてください。
まずは『自分たちの家』のコンセプトが何かを導き出しましょう。
いきなり住宅展示場に飛び込むのは危険なのでやめてください。
さらに無料住宅相談も『SUUMO』のように提携住宅会社が莫大にある場合は別として、個人経営や中小の無料住宅相談会社などにも注意が必要です。
数少ない提携住宅会社に誘導される恐れがあります。
ハウスメーカーや工務店の概要を一般素人の方がザックリとイメージできるように表現すると、
大手ハウスメーカーの代表的なメリットは、
信頼と実績、保証やアフターサービスの充実
であり、逆にデメリットは
断熱気密等の高い数値獲得は不可、自然素材・造作家具等が苦手
(※一条工務店は別)
といったイメージです。
逆に工務店(ハイグレード工務店)の代表的なメリットは、
断熱気密等の数値獲得、設計力、自然素材、造作家具が得意
という傾向があります。
(※あくまでも傾向であり一般的な工務店は別)
特に工務店は
●一般的に皆さまが想像する『安くて標準的仕様』の工務店
●『超高性能住宅』を手掛けるハイグレード工務店
の2種類に分けて検討する必要があります。
なぜならハイグレード工務店は大手ハウスメーカーと価格も同等で一般的な工務店と全く違うからです。
もちろん各住宅会社で千差万別ですから実際は細かいところも含めて完璧に説明するのは難しいです。
しかし、あくまもザックリしたイメージでいえばこのような感じかと思います。
大手ハウスメーカーは坪単価ランキングの章で説明した『表』でもわかるように金額もバラバラです。
特に、先ほどの『表』には載っていませんが、『タマホーム』の場合は坪単価が安いですが大手ハウスメーカーです。たとえば…
ヘーベルハウスで総額4000万の住宅がタマホームだと2500万
くらいだったりします。
最後に大手ハウスメーカーの選び方のポイントをザックリいうと、
東京23区など首都圏の狭小地では鉄骨系は避けるべきだといえます。
逆に建物の規模が大きく集合住宅や店舗などと併用の場合は鉄骨系が価格や工期、その他有利になる場合もあります。
高断熱高気密等、性能重視なら一条工務店が絶対的地位を誇っています。
大手ハウスメーカーまとめ
現代はSNSやYouTubeの影響で、スーパー工務店を含む
ハイグレード工務店
(※高性能住宅を販売する上位約10%の優秀工務店)
がかなり脚光を浴びてきています。
それに伴って実際はハイグレード工務店ではない一般的な工務店も高性能住宅を手掛け始めていて『工務店』のイメージが全体的に向上しています。
逆に大手ハウスメーカーは30年ほど以前の全盛期に比べると少し勢いが無くなっている印象をうけます。
しかし今まで半世紀以上にわたり信頼と実績を積み上げてきた軌跡は大きいといえます。
工務店の場合、10年間でその約7割が倒産や廃業等で無くなってしまうといわれています。
もちろん職人さんの一人工務店もあったりするのであくまでも参考値ではありますが…
一方で大手ハウスメーカーの倒産確率は低いです。
過去に無くなってしまったハウスメーカーもありますがその顧客は確実に引き継がれています。
もし、あなたが高性能住宅(高断熱高気密)などに特化したいのであれば現状では一条工務店一択になります。
そもそも大手ハウスメーカーは耐震性は問題無いですが
『高断熱高気密』や『自然素材・無垢の建材や造作』
に関してはあまり得意とはいえません。
鉄骨系や、木造でも型式認定住宅の割合が多いため
設計の自由度が低いというデメリットがあります。
現代はグローバル化の影響で情報が多すぎるため『情報迷子』になっている人を多く見かけます。
各ハウスメーカーごとに『得意分野』があります。何も予習せずにいきなり住宅展示場に飛び込むと各ハウスメーカーのポジショントークに惑わされてしまいます。
『家づくり』に正解はありません。
建築地域・家族構成・予算・居住想定期間・土地条件ほか個々に条件が違います。
それらによって正解は異なります。
まずは事前に各社研究をして必要な優先順位を決めて『自分の家のコンセプト』を明確化してください。
自分たちにとって最良のハウスメーカーを導き出すのはあなたです。
※1.29追記:真山虎次郎からのアドバイス
いきなり住宅展示場に行くのはオススメしません。
最初は無料の資料請求などで事前に勉強することが大切です。
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