
営業という仕事を長くやっていると、
「どうすればうまく説明できるのか」
「どうすればお客様を説得できるのか」
「どうすればクロージングがうまくなるのか」
ということを考えるようになります。
もちろん、どれも大切です。
商品知識も必要です。
説明力も必要です。
プレゼンテーション能力も必要です。
でも私は、住宅営業をはじめ、設計、施工管理、リフォーム、管理職、ホームインスペクションなど、30年以上いろいろな立場で人と接してきて、もっと根本的なことがあると思うようになりました。
それは、
「何を話すか」の前に、「誰が話すか」がある。
ということです。
どれだけ正しいことを言っても、
「この人、なんとなく嫌だな」
と思われていたら、その話はなかなか入っていきません。
逆に、
「この人の話なら聞いてみよう」
と思ってもらえれば、難しい話でも耳を傾けてもらえる。
私は営業という仕事は、商品を説明する仕事である前に、
「自分の話を聞いてもらえる関係を作る仕事」
でもあると思っています。
営業は「100人全員に好かれるゲーム」ではない
最初に言っておきたいことがあります。
私は、
「誰からも好かれる人間になりましょう」
と言いたいわけではありません。
そんなことは無理です。
どんなに感じのいい人でも、合わない人はいます。
逆に、少し癖のある人が好きだという人もいます。
人間同士ですから、相性があります。
だから私は、営業をある意味で確率論として考えています。
100人全員に好かれる方法を探すのではない。
好かれる可能性のある行動を少しずつ増やして、嫌われる可能性のある行動を少しずつ減らす。
私はこの考え方を大切にしています。
たとえば、お客様のお子さんの名前が「たけし君」だったとします。
以前、私が一緒に仕事をしたトップセールスマンに、本当に営業力のある人がいました。
大勢が集まる全体会議で、その人が前に立つ。
それだけで、
「トップセールスマンって、こういうオーラがあるんだな」
と若かった私は感じたくらいです。
ところが、その人がお客様のお子さんに、
「たけし、バカ、こっち来い。危ないだろ」
というような話し方をすることがありました。
もちろん、すでにお客様と十分な信頼関係ができていたのかもしれません。
親しみを込めていたのでしょう。
それで喜ぶご家族もいるかもしれません。
でも私は横で見ながら、
「俺ならやらないな」
と思っていました。
「たけし君、そっちは危ないよ」
でいいじゃないですか。
前者がものすごいプラスになる可能性があるなら別です。
でも、そうでないなら、わざわざマイナス1点、マイナス2点を食らう可能性を作る必要はない。
これが私の考える営業の確率論です。
営業では、大きな失敗だけを避ければいいわけではない。小さなマイナスを一つずつ減らすことも大切です。
人間は、感情の生き物である
私のコミュニケーションの考え方を一つにまとめるなら、
「人間は感情の生き物である」
ということになります。
住宅営業をしていた頃、私はお客様だけを見ていればいいとは思っていませんでした。
上司。
部下。
設計担当。
現場監督。
事務スタッフ。
住宅展示場のアドバイザー。
不動産会社。
職人さん。
取引業者。
いろいろな人が一つの仕事に関わります。
だから私は、
営業マンは、すべての人に対して目配りをした方がいい
と思っています。
これは、
「全員にゴマをすりましょう」
という話ではありません。
人は、
「自分を大切に扱ってくれた人」
を覚えています。
反対に、
「自分を雑に扱った人」
も覚えています。
そして、その小さな感情が、思わぬところで仕事に影響することがあります。
営業とは、人間を相手にする仕事です。
だったら、人間の感情を無視して合理性だけで動いても、うまくいかないことがある。
私はそう思っています。
営業マンは、そんなに喋らなくてもいい
営業というと、
「話がうまい人」
というイメージがあります。
確かに、ある程度は話せた方がいいでしょう。
でも私は、営業マンという仕事を選んでいる時点で、ほとんどの人には最低限の「話す力」はあると思っています。
むしろ難しいのは、
聞くことです。
住宅展示場に入ってきたお客様を想像してください。
お客様も、営業されることは分かっています。
アンケートを書かされるのかな。
電話番号を聞かれるのかな。
営業電話が来るのかな。
このまま席に座らされて、延々と商品の説明を聞かされるのかな。
最初から多少は警戒しています。
そこで営業マンが、
「いらっしゃいませ。それでは弊社の住宅の特徴からご説明します」
と始めたらどうでしょう。
営業マンとしては一生懸命です。
でも、お客様はまだ、
「あなたの話を聞きたい」
という状態になっていないかもしれません。
私はむしろ、
「今日はどうされたんですか?」
「何か見てみたいものがありますか?」
そんなところから始めて、お客様に話してもらうことを大切にしていました。
そして私は、部下などにもこんな話をしていました。
「お前が話すのは、自分が言いたいことを全部伝えるためじゃない。次にお客さんが『あ、そうそう、これ話したかったんだ』と思うスイッチを押すために話すんだ」
ということです。
「話したくなるスイッチ」を押す

これは、私のコミュニケーションの中でもかなり大切な考え方です。
お客様が話す。
営業マンが聞く。
少しだけ営業マンが話す。
その話を聞いたお客様が、
「あ、そうそう。実はうちの場合……」
と、また話し始める。
そして営業マンは、また聞く。
私は、この繰り返しが理想だと思っています。
営業マンが10分間ずっと話し続ける必要はありません。
むしろ営業マンが話す内容は、
相手が次に話したくなるための呼び水
でもいい。
私はこれを、
「話したくなるスイッチを押す」
と考えています。
たとえば、
「お子さんが小さいと、リビングの使い方って結構変わりますよね」
と一言言えば、
「そうなんですよ。うちは子どもがリビングで勉強するので……」
と話が広がるかもしれません。
そこから、
家族の生活。
子育て。
収納。
間取り。
将来。
今の住まいの不満。
いろいろな情報が自然に出てきます。
質問票を上から順番に読み上げるより、はるかに深い話になることがあります。
「聞く」とは、黙っていることではない
ここは誤解されやすいところです。
「聞き上手になりましょう」
と言うと、
黙って、
「はい」
「なるほど」
「そうなんですね」
と言っていればいいように思われることがあります。
私は違うと思っています。
本当に相手に気持ちよく話してもらうには、
リアクションが必要です。
「それは大変でしたね」
「え、本当ですか?」
「それ、どういうことですか?」
「なるほど。それでどうなったんですか?」
「それは知らなかったです」
そうやって反応すると、相手は、
「この人はちゃんと聞いている」
と感じます。
私はリアクションを、比較的大きくする方です。
ただし、これもテクニックとして大げさに驚けばいいという話ではありません。
自分が本当に興味を持ったなら、
その興味が相手に伝わるように表現する。
これが大事です。
「聞いてますよ」
と思っているだけでは、相手には見えません。
「聞いている」は身体でも伝える
これは管理職をしていた頃にも意識していました。
部下が話しかけてきた。
自分はパソコンを見ている。
耳では聞いている。
「うん、聞いてるよ」
本人はそう思っているかもしれません。
でも、部下から見たらどうでしょう。
私はできるだけ椅子や身体を相手の方へ向けるようにしていました。
顔を見る。
目を合わせる。
身体を向ける。
話を聞く。
つまり、
「聞いてるよ」は耳だけでは伝わらない。身体でも伝える。
ということです。
これは営業でも同じです。
お客様が大切な話をしているのに、資料をガサガサ探しながら、
「はいはい、なるほど」
では、聞いているつもりでも伝わらない。
人間は、言葉だけで相手を判断しているわけではありません。
表情。
目線。
身体の向き。
声の調子。
間。
そういうものを全部見ています。
「気にかけている」だけでは足りない
私はこの考え方を、営業だけではなくクレーム対応でも非常に大切にしています。
「気にかけている」だけでは足りない。
もっと大切なのは、
「気にかけていることが、相手に伝わっているか」
です。
これは意外に大きな違いです。
営業マン本人は、
「ちゃんと考えてますよ」
と思っている。
でも、お客様から見たら、
全然電話がない。
会っても目を合わせない。
何を考えているのか分からない。
そうなれば、
「この人、うちのことなんて気にしていないんじゃないか」
と思われても仕方ありません。
逆に、
「その後どうですか?」
と一言連絡する。
以前話した内容を覚えている。
名前を呼ぶ。
会ったときに身体を向ける。
ちゃんと反応する。
そういう小さな行動によって、
「自分のことを気にしてくれている」
と相手に伝わります。
営業では、本人の気持ちよりも、
相手にどう伝わったか
が重要になる場面があります。
褒めるなら「根拠」を添える
人に好かれる方法として、
「相手を褒めましょう」
という話もよくあります。
私は、ただ何でも褒めればいいとは思いません。
「すごいですね」
「素晴らしいですね」
「さすがですね」
だけを繰り返していたら、かえって薄っぺらく感じることがあります。
私は、
褒めるなら、根拠を添える。
ことが大切だと思っています。
「この資料、すごく分かりやすいですね」
だけではなく、
「最初に結論が書いてあって、その後に写真が並んでいるから、初めて見る人でも理解しやすいですね」
と言う。
そうすると、
「あ、この人、本当に見て言っているんだ」
と伝わります。
感謝も同じです。
「ありがとうございます」
だけでも悪くありません。
でも、
「昨日あそこまで確認していただいたので、今日の打ち合わせがすごくスムーズでした。ありがとうございました」
と言った方が、はるかに伝わります。
だから私は、
「褒めるなら根拠を添える。感謝するなら理由を添える。」
と考えています。
そのためには、相手をちゃんと見なければいけません。
つまり、褒める技術の前に必要なのは、
相手に興味を持つこと
なのだと思います。
雑談力とは「面白い話をする能力」ではない

住宅営業をしていた頃、あるお客様のご主人が高価なレーシング自転車に乗っていました。
私は自転車に特別詳しいわけではありません。
でも、見れば、
「これ、普通の自転車じゃないな」
くらいは分かります。
だから聞きました。
「これ、すごい自転車ですよね。いくらくらいするんですか?」
そこからご主人がいろいろ話してくれました。
好きなものの話ですから、当然話も弾みます。
結果として、その住宅の契約は他社になりました。
奥様が競合会社の女性担当者を非常に気に入ったことなど、いくつかの要因があったと記憶しています。
ただ後で、ご主人からは、
「自転車のことに気づいて聞いてくれたのは、トラジロウさんくらいだった」
という趣旨のことを言われました。
私はこの経験からも、
雑談力とは、面白い話をする能力ではない
と思っています。
大切なのは、
相手が大切にしているものに気づく力
です。
車。
時計。
ペット。
子ども。
趣味。
仕事。
家に置いてあるもの。
何でもいい。
そこに相手の感情が乗っていることがあります。
それに気づいて、本当に興味があれば聞いてみる。
そこから会話が始まります。
猫をかわいがったことが「勝因」になることもある
逆に、契約していただいたお客様には、
「なぜ私を選んでいただいたんですか?」
と、後から聞くことがありました。
私はこれを「勝因分析」だと思っています。
その中で印象に残っていることがあります。
お客様の家で打ち合わせをしていたとき、猫が私の横へ来たことがありました。
私は猫が好きなので、普通に撫でながら話をしていました。
私としては営業テクニックでも何でもありません。
ただ猫が来たから、かわいがっていただけです。
ところが、後になってお客様から、その姿も非常に印象が良かったという話を聞きました。
こんなものなんです。
営業マン本人は、
「今日は商品の性能を完璧に説明できた」
と思っている。
でも、お客様が覚えているのは、
猫をかわいがっていた姿
かもしれない。
だから営業は面白い。
そして怖い。
自分が「これが決め手だ」と思っているものと、お客様が感じているものは、必ずしも一致しません。
決定権者だけを見ればいいわけではない
営業では、
「決定権者を見極めろ」
と言われます。
これは正しいと思います。
でも私は、
決定権者だけを大切にすればいい
という意味ではないと思っています。
以前、部下が担当していた比較的大きな住宅案件に、私も途中から関わったことがありました。
ご主人とは非常に話が合いました。
営業や仕事の話もして、かなり気に入っていただけていたと思います。
ところが、その商談は最終的に負けました。
後でご主人から連絡をいただいたので、私はお願いしました。
「もう結果をひっくり返そうとは思っていません。ただ、今後の勉強のために、本当の敗因を教えていただけませんか。それをせめてもの私の報酬にさせてください」
すると、ご主人が教えてくれました。
奥様が、最初の段階からあまり良い印象を持っていなかった。
部下がご主人を中心に扱い、奥様への挨拶や名刺交換などで、少し「付属的な扱いをされた」と感じていたようなのです。
しかも奥様も仕事をしていて、住宅ローンにも関わる。
当然、家づくりの当事者です。
こちらには悪意などありません。
でも、
名刺。
目線。
話しかける回数。
身体の向き。
そうした小さなものが積み重なって、
「私は大切にされていない」
という感情になってしまった。
住宅のような大きな契約でも、
一発の大失敗で負けるとは限りません。
マイナス1点。
マイナス1点。
またマイナス1点。
その積み重ねで負けることがあります。
だから私は、
営業マンは、すべての人に目配りをした方がいい
と思うのです。
「いい人」と「人に好かれる人」は同じではない
ここも、私が長く仕事をしてきて感じることです。
すごく真面目。
素直。
頼まれたら断れない。
何を言われても、
「はい、分かりました」
と答える。
一見すると、とても「いい人」です。
でも、そういう人が必ずしも仕事で人間関係をうまく作れるとは限りません。
むしろ、何でも引き受けることで、
「あの人なら何を言っても大丈夫」
と思われてしまうことがあります。
私は、
人に好かれることと、舐められることは違う
と思っています。
優しいことと、
何をされても怒らないこと
も違います。
6歳上の先輩に「お断りします」と言った日
若い頃、現場監督をしていたときの話です。
私より6歳ほど年上の先輩がいました。
ここでは仮に辻さんとしておきます。
辻さんは、私をよくからかいました。
芸能人の誰かに似ていると言って笑ったり、
「ジュース買ってこい」
と言われて買ってくると、今度はその選んだジュースをからかわれたり。
一つひとつは大事件ではありません。
でも、積み重なると嫌なものです。
私はしばらく我慢していました。
ただし、ヘラヘラ笑って何でも受け入れていたわけではありません。
一方で、別の先輩たちには本当に助けてもらっていました。
仕事を教えてくれる。
困ったときにフォローしてくれる。
そういう先輩には、私も感謝していました。
ある日の工事会議で、辻さんから仕事の担当を代わってほしいという話をされました。
私はその場で言いました。
「お断りします」
当然、
「なんでだよ」
となります。
そこで私は、みんなの前で説明しました。
年齢が6歳上だからというだけで、何でも手伝わなければならないとは思っていない。
普段から仕事を教えてくれたり、助けてくれる先輩には、私だって協力する。
実際に、
「あの先輩にはこういうことを教えてもらった」
「あの先輩にはこういうとき助けてもらった」
と、具体的に話しました。
でも辻さんからは、普段そういうことをしてもらっていない。
むしろ、いつもからかわれている。
だから今回はお断りします。
そういう趣旨のことを、はっきり言いました。
周りの人たちも、それまでの様子を見ています。
私は普段、何でもかんでも噛みついていたわけではありません。
仕事もしていました。
他の先輩には感謝もしていた。
だからこそ、一度はっきり言った言葉が効いたのだと思います。
私はこの経験から、
「いい人」と「何をしても怒らない人」は違う
と考えるようになりました。
人に好かれながら、言うべきことは言う

私は、営業コミュニケーションというと、
「笑顔」
「相手を褒める」
「聞き上手になる」
といった話だけでは足りないと思っています。
人間関係は、もっと複雑です。
耐えるべきところでは耐える。
助けてもらったら感謝する。
味方を増やす。
自分から相手の懐に入ることもある。
でも、
言うべきタイミングが来たら言う。
これもコミュニケーションです。
何でもYESと言うことが、コミュニケーション能力ではありません。
むしろ、
「この人は普段は穏やかだけれど、筋が通らないことにはNOと言う」
と分かってもらう方が、長い人間関係では信用につながることがあります。
好かれることと、舐められないことは両立できます。
私はそう思っています。
普段の信用が、自分を守ってくれる
仕事をしていると、どうしても苦手な人や怖い人に出会います。
そういう人を全部敵に回す必要もありません。
逆に、無理に仲良くなる必要もありません。
私は、
挨拶する。
目を合わせる。
必要な話はする。
最低限の関係を保つ。
それだけでも違うと思っています。
人間関係は0か100ではありません。
大親友になる必要はない。
でも、完全に関係を切ってしまえば、相手から見てもこちらが分からなくなります。
だから私は、少し距離を置きながらも、最低限の接点は持つようにしていました。
そして、普段から周りの人にきちんと接していると、何かあったときに、
「あの人がそんなことを言うなら、何か理由があるんじゃないか」
と思ってくれる人が出てきます。
つまり、
普段の仕事ぶりが、いざというとき自分の代わりに戦ってくれる人を作る。
これもコミュニケーションの大きな力です。
相手の「話す速度」を尊重する
もう一つ、私自身も今でも気をつけていることがあります。
それは、
間を空けることです。
私は話すことが好きです。
放っておけば、かなり喋ります。
だからこそ、自分の会話を録音して後で聞いてみると、
「ちょっと急いでるな」
「ここ、相手がまだ話そうとしているのに被せてるな」
と気づくことがあります。
本人は普通に話しているつもりでも、録音して第三者のように聞くと、印象が違います。
これは非常に勉強になります。
相手が話し終わった。
そこで0.5秒待つ。
1秒待つ。
すると、
「それでね……」
と、もう一つ大切な話が出てくることがあります。
ところが営業マンが沈黙を怖がって、
「なるほど! では弊社の場合はですね」
とすぐ被せてしまったら、その話は永遠に出てこないかもしれません。
沈黙も会話の一部です。
北風より、太陽の方が人は自分から動く

私はコミュニケーションを考えるとき、「北風と太陽」の話を思い出すことがあります。
北風が、
「脱げ」
と強く吹けば吹くほど、旅人はコートを押さえる。
太陽が暖かく照らすと、自分からコートを脱ぐ。
営業も似ています。
「契約してください」
「今月なら安くできます」
「今日決めてください」
と押せば押すほど、お客様は、
「売り込まれている」
と感じて身構えることがあります。
反対に、
まず話を聞く。
急がせない。
本当に困っていることを聞く。
必要な情報を渡す。
分からないことは分からないと言う。
そうしているうちに、お客様の方から、
「それで、次はどうすればいいですか?」
と聞いてくることがあります。
私は、こちらの方が強いと思っています。
人を無理に動かすのではなく、相手が自分から動ける状態を作る。
これも営業コミュニケーションです。
営業マンが売っているのは「商品」だけではない
住宅営業なら、家を売っています。
車の営業なら、車を売っています。
保険営業なら、保険を売っています。
でも実際には、それだけではありません。
同じ商品でも、
「この人から買いたい」
と思うことがあります。
逆に、商品は気に入っているのに、
「この人からは買いたくない」
と思うこともあります。
だから私は、住宅営業をしていた頃、
「会社の商品を売る人」
で終わりたくないと思っていました。
理想は、
「この会社だから契約した」ではなく、「この人がいる会社だから契約した」と言ってもらえること。
です。
そのために必要なのは、派手な営業テクニックだけではありません。
挨拶する。
名前を覚える。
身体を向ける。
目を見る。
リアクションする。
質問する。
話を聞く。
相手が大切にしているものに気づく。
根拠を持って褒める。
理由を添えて感謝する。
必要ならNOと言う。
どれも小さなことです。
でも私は、
営業の結果は、こういう小さな行動の積み重ねで変わる
と思っています。
「正しい説明」をする前に、聞いてもらえる人になる
営業マンは、正しい商品説明をしなければいけません。
専門知識も必要です。
提案力も必要です。
でも、それだけでは足りません。
どれだけ正しいことを言っても、
「この人の話は聞きたくない」
と思われてしまったら届きません。
だから、
正しい説明をする前に、その説明を聞いてもらえる人になる。
私はこれが、人に好かれる営業コミュニケーションの基本だと思っています。
100人全員から好かれる必要はありません。
無理に自分を作る必要もありません。
面白い雑談を次々に披露する必要もありません。
ただ、
相手を見る。
相手に興味を持つ。
相手が話したいことを聞く。
相手が大切にしているものを大切に扱う。
そして、自分が相手を気にかけているなら、
それが相手に伝わるように表現する。
人間は感情の生き物です。
営業も、最後は人と人です。
私は30年以上仕事をしてきて、
「何を話すか」以上に、「誰が話すか」が大切になる瞬間がある
ことを何度も経験してきました。
だから私は、営業で何かを伝えようとする前に、一度だけ考えるようにしています。
「この人は今、私の話を聞きたいと思っているだろうか?」
もし答えがNOなら、
商品の説明を増やす前に、やることがある。
まずは、
この人になら話してもいい。
この人の話なら聞いてみてもいい。
そう思ってもらえる関係を作る。
営業コミュニケーションは、そこから始まるのだと思います。



