私は、心理学者ではありません。

営業コンサルタントとして、営業理論だけを研究してきた人間でもありません。

大学の建築学科を卒業してから30年以上、住宅・建築・不動産の世界で仕事をしてきた実務家です。

現場監督をやりました。

設計もやりました。

住宅営業もやりました。

管理職として部下を持ち、リフォーム会社でも働き、ホームインスペクターとして数多くの建物も見てきました。

その間、うまくいった仕事もたくさんありました。

しかし、それ以上に私の中に残っているのは、

うまくいかなかった仕事です。

契約を取れなかった。

お客様を怒らせた。

競合はいないと思っていたら、実はいた。

良かれと思ってやったことが、相手にはまったく違う意味で伝わっていた。

部下との関係に悩んだ。

上司とぶつかった。

クレームの現場で、どうしたらいいのか分からなくなった。

冬の屋外で何時間も近隣住民に囲まれ、「もう住宅の仕事なんて辞めたい」と思ったことさえあります。

それでも30年以上、この世界で仕事を続けてきました。

そして振り返ってみると、成功した経験だけではなく、むしろ失敗した経験の中にこそ、その後の仕事で使えるものがたくさん残っていました。

このページでは、そんな30年以上の経験から私なりに身につけてきた仕事術を、5つのテーマに分けて紹介します。

私の話には、難しい心理学用語があまり出てきません

営業の本を開くと、さまざまな心理学用語が出てきます。

もちろん、私も営業という仕事に携わってきた以上、そうした理論を否定するつもりはありません。

実際、人間の行動を説明するうえで、心理学や行動科学は非常に参考になります。

ただ、私自身の仕事の順番は逆でした。

理論を覚えて、それを現場で使ってきたわけではありません。

現場でお客様と話す。

失敗する。

なぜ失敗したのかを考える。

契約できたら、なぜ自分を選んでくれたのかを聞く。

お客様を怒らせてしまったら、どこでボタンを掛け違えたのかを考える。

部下が動いてくれなければ、自分の伝え方の何が悪かったのかを考える。

それを何十年も繰り返してきました。

その結果、

「人間って、どうもこういうものらしい」

という自分なりの経験則が少しずつできていったのです。

後になって本を読むと、

「ああ、あのとき自分が経験したことには、ちゃんと名前が付いていたのか」

と思うことがあります。

つまり私の場合、

理論から実体験を探したのではなく、実体験の後から理論を発見してきた。

だから、このサイトで紹介する仕事術も、難しい専門用語から始めるつもりはありません。

主役は、あくまで現場です。

1.弱者は、強者と同じ土俵で戦ってはいけない

営業という仕事をしていると、

「もっと頑張れ」

と言われることがあります。

もちろん、努力は必要です。

しかし私は、努力することより前に考えなければならないことがあると思っています。

「どこで頑張るのか」です。

自分より話がうまい営業マンがいる。

人脈の広い人がいる。

ものすごい行動量で動ける人がいる。

華のある人がいる。

圧倒的な実績を持った人がいる。

そういう人たちの長所を全部まねしようとしても、私は勝てません。

だったら、

自分が一番勝ちやすい場所で戦えばいい。

私は長年の現場経験、設計経験、施工経験を生かして、「本物の技術営業」という自分なりの場所を作ってきました。

苦手な20点を50点にすることばかり考えるのではなく、90点あるものを100点にする。

案件がないなら、契約率だけを上げようとするのではなく、まず自分のところに案件が集まる状態を作る。

契約数だけを見るのではなく、最終的に残る粗利や、そのために使った時間まで考える。

これは後になって、いわゆるランチェスター的な考え方にも通じるものだと知りました。

しかし、最初に理論があったわけではありません。

弱い自分がどうしたら生き残れるのかを考えていたら、結果としてそこにたどり着いたのです。

→ 第1回
「弱者は、強者と同じ土俵で戦ってはいけない――30年間の住宅営業で学んだ『勝てる場所で戦う』ということ」

【近日公開】

2.「何を話すか」より先に、「誰が話すか」がある

営業というと、

「何を話せば売れるのか」

を考えがちです。

もちろん、説明する内容は大切です。

でも私は、それより前に、

「この人の話なら聞いてみよう」

と思ってもらえる人間になることの方が大切だと思っています。

営業マンだからといって、誰からも好かれる必要はありません。

そんなことは不可能です。

ただし、

好かれる可能性のある行動を少しずつ増やし、嫌われる可能性のある行動を少しずつ減らすことはできます。

相手の話を最後まで聞く。

相手が大切にしているものに気づく。

褒めるなら、なぜそう思ったのかまで伝える。

感謝するなら、何に感謝しているのかまで伝える。

そして、ただ黙って聞くのではなく、

相手が「そうそう、それを話したかったんだ」と思えるスイッチを押す。

私はこれを、営業だけの技術だとは思っていません。

人間関係そのものの技術だと思っています。

そしてもう一つ大切なのは、

人に好かれることと、何をされても怒らないことは違う。

必要なときには「お断りします」と言う。

好かれることと、舐められないことは両立できます。

→ 第2回
「人に好かれる営業コミュニケーション――『何を話すか』より先に、『誰が話すか』がある」

【近日公開】

3.契約を取ることが、営業のゴールではない

住宅営業の世界では、どうしても契約数が注目されます。

しかし私は、営業の仕事は契約書に判を押してもらったところで終わるものではないと思っています。

住宅は、契約してから完成するまでが長い。

そして完成後も、その家にはお客様の生活が続いていきます。

だから私は、

「その場だけうまくいく営業」を怖いと思っています。

初回面談では何を聞くのか。

予算だけでなく、誰がお金を出すのか。

誰が最終的な決定に影響するのか。

競合はいないと言われたとして、本当にいないのか。

一度聞いた情報は、今も同じなのか。

契約できなかったら、なぜ負けたのか。

契約できたら、なぜ選んでもらえたのか。

そして、ときには喋るのをやめる。

クロージングだからといって、最後まで営業マンが喋り続ける必要はありません。

私は、お客様だけで考えてもらうために席を外したことがあります。

後になって、その時間が非常に重要だったという趣旨のことを言われました。

私は勝手に、

「神の時間」

と呼んでいます。

また、値引きを繰り返して契約を取れば、それで成功なのか。

私はそうは思いません。

最後に利益が残り、お客様にも納得してもらい、

「あなたに頼んでよかった」

と言ってもらえて、初めて一つの仕事が終わる。

だから私にとって営業とは、

契約を取る技術ではなく、契約の前から完成後まで話をつなげていく仕事です。

→ 第3回
「契約を取ることが営業のゴールではない――30年間の現場で身につけた『泥臭い営業実践術』」

【近日公開】

4.クレーム対応で最初に必要なのは、「正しい説明」ではない

住宅の仕事を30年以上やっていると、当然クレームにも遭遇します。

営業として。

現場監督として。

管理職として。

そして現在は、第三者のホームインスペクターとして。

私は冗談半分で、自分のことを

「クレーム対策本部長」

と呼ぶことがあります。

難しくなった案件が、なぜか私のところへ回ってくることが多かったからです。

そこで学んだのは、

正しいことを言えば、人は納得するわけではない

ということでした。

法律上正しい。

契約上正しい。

技術的に正しい。

それでも相手がこちらの話を聞ける状態になっていなければ、その正論は届きません。

まず話を聞く。

全部吐き出してもらう。

「もう全部聞いた」と思ったところから、もう一度聞く。

そして、

「この人は、いったい何に一番傷ついているのだろう」

と考える。

私は杉並区の住宅現場で、冬の屋外に何時間も立ち、近隣住民に囲まれたことがあります。

足が震えました。

「もう住宅の仕事なんて辞めたい」

と思ったほどです。

ところが、その後関係を作り直していくうちに、最初は完全に敵だったはずの近隣住民のお宅へ招かれ、お茶とお菓子まで出してもらえるようになりました。

法律が変わったわけではありません。

建物が変わったわけでもありません。

変わったのは、

人間関係です。

クレーム対応とは、相手を言い負かす技術でも、何でも要求を受け入れる技術でもありません。

敵同士になってしまった人間を、

もう一度「話のできる人間同士」に戻す仕事なのだと思っています。

→ 第4回
「クレーム対応は『謝り方』ではない――30年間の住宅現場で学んだ、怒りを信頼に変える技術」

【近日公開】

5.AIに人生を教えてもらうのではなく、自分の人生をAIに整理してもらう

そして最後は、AIについてです。

私はAIの専門家ではありません。

プログラマーでもありません。

むしろ私は、得意なことと苦手なことの差がかなり大きい人間だと思っています。

文章を長くきれいに構成することも、決して得意ではありません。

しかし、30年以上現場にいたことで、

「あれはおかしい」

という違和感に気づくことがあります。

そして、過去の経験についてなら、何時間でも話すことができます。

そこで私は、AIと競争することをやめました。

AIは、情報を整理するのが得意です。

構成を考えるのも得意です。

大量の文章をまとめるのも得意です。

私より、はるかにきれいな文章を書くこともできます。

一方でAIには、

私が30年間現場で経験してきた人生はありません。

だったら、戦う必要はない。

組めばいい。

私はこれを、

「AIは最高の参謀、人間は経験を持った指揮官」

と考えています。

実は、この5本の記事自体が、その実験から生まれました。

私が何時間も、自分の失敗や成功、恥ずかしかったこと、腹が立ったこと、うれしかったことをAIに話す。

AIがそれを整理し、構成し、文章にする。

そして最後に私が読み、

「これは違う」

「ここは俺の言いたかったことだ」

と判断する。

つまり、

人間が原液を持ち、AIが編集する。

AI時代になったからこそ、私は逆に、人間が生きてきた経験の価値は大きくなるのではないかと思っています。

→ 第5回
「凹凸人間の仕事術――AI時代に『苦手を克服する』より大切なこと」

【近日公開】

5つに共通しているのは、「人間を見る」ということ

ここまで5つに分けてきました。

しかし、私の中ではすべてつながっています。

営業戦略も。

コミュニケーションも。

営業実践も。

クレーム対応も。

AIとの付き合い方も。

突き詰めると、

「人間はどういう生き物なのか」

という話なのだと思います。

人は、いつも合理的に判断するわけではありません。

正しいことを言われたからといって、必ず納得するわけでもありません。

好きな人の話なら聞けても、嫌いな人から同じことを言われたら聞きたくないことがあります。

自分が大切にしているものを大切に扱ってくれた人を、好きになることがあります。

怒っているときには正論が入ってこないことがあります。

そして、どれだけ合理的に考えているつもりでも、最後には感情で決断することがあります。

私は30年以上、人と住宅の間に立つ仕事をしてきました。

だから住宅について話しているようで、実はずっと、

人間について考えてきたのかもしれません。

私の講演・研修は、「教科書を読む時間」ではありません

今回整理した5つのテーマは、講演・企業研修・社内勉強会などでもお話しできます。

ただし、私の話は、完成した文章を壇上で読み上げるものではありません。

実際にあった商談。

上司とのやり取り。

部下とのやり取り。

怒ったお客様との会話。

契約を取ったとき。

契約を失ったとき。

近隣住民に囲まれたとき。

ときには、当時の会話を一人二役、三役で再現しながら話します。

なぜなら、

現場の話は、きれいな結論だけを聞いても面白くないからです。

迷ったところ。

失敗したところ。

相手の表情。

そのとき自分が何を考えたのか。

そこまで含めて初めて、経験は人に伝わるのだと思っています。

ブログを読んでくださった方にも、

「記事に書いてあった話だ」

だけで終わらない講演にしたい。

ここには書き切れなかった失敗談も、笑い話も、かなり残っています。

30年間の経験を、次の誰かの「使える経験」に変えたい

私は、自分のやり方が唯一の正解だとは思っていません。

30年間仕事をしてきたからといって、何でも分かるとも思っていません。

ただ、

実際にやってきた人間だから話せることはある。

これは今、強く感じています。

成功した話だけではありません。

失敗した話もあります。

格好悪い話もあります。

今なら絶対にやらないこともあります。

でも、それらを全部含めて、

「私はこう考えた」

「こうやったらうまくいった」

「これは失敗した」

「だから次からこう変えた」

と伝えることならできます。

そして、それを聞いた人が、

「だったら自分の仕事では、こう使えるかもしれない」

と一つでも持ち帰ってくれたら、それでいい。

経験は、持っているだけでは財産になりません。

言葉にして。

整理して。

誰かに伝えて。

初めて、次の人が使えるものになる。

この5本の記事は、私が30年以上かけて集めてきた経験を、初めて体系的に言葉にしたものです。

これから順次公開していきます。

住宅・建築・不動産業界の方はもちろん、

営業職の方。

経営者の方。

管理職の方。

部下との関係に悩んでいる方。

人とのコミュニケーションに悩んでいる方。

そして、

「AI時代に、自分の経験なんてもう価値がないのではないか」

と思っている50代、60代の方にも。

何か一つ、持ち帰っていただけるものがあればうれしく思います。

5つのテーマ

第1回|弱者の営業戦略
弱者は、強者と同じ土俵で戦ってはいけない
【近日公開】

第2回|人に好かれる営業コミュニケーション
「何を話すか」より先に、「誰が話すか」がある
【近日公開】

第3回|泥臭い営業実践術
契約を取ることが営業のゴールではない
【近日公開】

第4回|クレーム予防・対応術
クレーム対応は「謝り方」ではない
【近日公開】

第5回|凹凸人間の仕事術――AI時代の働き方
AIに人生を教えてもらうのではなく、自分の人生をAIに整理してもらう
【近日公開】

講演・研修・企業向けのご相談について

上記テーマを中心に、住宅・建築・不動産業界での営業研修、コミュニケーション研修、クレーム対応、管理職・経営者向けの講演・研修など、ご要望に応じて内容を組み立てます。

単なる一般論ではなく、30年以上の実務経験と実際のエピソードをベースにした内容です。

テーマや時間、対象となる方に合わせた構成については、お問い合わせください。